このお話は電波・・・(以下略)・・・なのでご注意ください。



今、俺たちはサルドバルドの城門の前にいる。
みんなから少し遅れる形で辿り着いたら皆が篭城しているせいでうまく攻められないらしいということで、

「ちょっと待ってろ。」
そう言って単身、城に潜入しました。
どうやって潜入したかは想像に任せることにしよう。

そして、数分後。

「制圧してきたぞ〜。」
単身で制圧を果たしてきた俺は城門を開け放って出てきた。

「「「「「「「「はやっ!!!」」」」」」」
ほぼ全員の心が一致した瞬間だった。

「じゃ、帰るか!!」

「ちょっとまてぃ!!
いくらなんでも早すぎるだろ!!
だいたい、数分後って手抜き過ぎ!!
城内の戦闘描写とかはどうなってんだよ!!」
ユートもあまりの速さに驚きを通り越して微妙に電波を受信していた。

「おお、いい突込みだ。
だが、そいつは秘密だ。
まぁ、ぶっちゃけめんどくさいっていうか、大人の事情ってやつだ。」

「「「「ぶっちゃけた―――――――――!!!」」」」

「な、なんなのこの混沌とした空間は・・。」
この空気の中、唯一(?)冷静でいられたセリアは滝のように流れる冷や汗を拭いながら呟くのだった。

そして、ネリーとシアーは・・。
「おお〜、コウかっこいい〜!」
「かっこいい〜。」
と、のんきな声をあげてましたとさ・・。



あるロウエターナル(から逃げている人)のお話

もう第6話


戦争も北方を制圧したことによって一時終りを告げた。
コウはこれからのことに話があると言われてレスティーナの私室に呼び出された。

「そんで、どうした?
ついにやりたくなったか?」

「開口一番にそれですかっ!!」
見事な突っ込みだった。
しかし、それは煌びやかなドレスに身を包む姫で無ければの話ではあるが・・。

「あんたもけっこうノリいいな。」
予想外な態度に呆然と呟く。

「コホン・・、それでは話を始めます。」
レスティーナは恥ずかしかったのか顔を赤くしてわざとらしく咳をする。
「今回のサルドバルドの制圧は随分早かったですね。
理由をうかがってもいいですか?」
いやいや、切り替え早すぎね?
とか思うが、恥ずかしそうな彼女の表情を見て大人な俺はとりあえず乗っておく事にした。

「ああ、それは大・・「もういいです。わかりましたので。」というわけだ。」
まるで阿吽の呼吸のようなやりとりだった。
為政者である彼女にとって空気を読む能力は長けているのか、むしろ黙れと言わんばかりの声だった。

「わかったよ。
んでこれからどうすんだよ。
北方を制圧したことであの豚の分不相応な考えは止まらなくなっているぞ。」
コウはレスティーナが出した答えを聞くためにわざと問題だけを提示した。

「はい。
だからこそ私は覚悟を決めました。
そのためにはあなたの協力は不可欠です。
無理にとは言いません。
それにこれは無関係な人間を巻き込むことを意味していますので・・。」
これから言おうとしていることはどんなことなのかレスティーナは辛そうに顔を俯かせて唇を噛んだ。

「言ってみろ。」
にやけていた表情を引き締めて先を促した。

「私の考えでは北方を制圧したことで近々他国が攻めてくることが予想されています。
なぜなら、今やラキオスはマロリガン、サーギオスに続く強国になりつつあるからです。
しかし、強国とはいえラキオスは急激にのし上がってきたために内政が未熟で国として安定していないのもあり、攻めるのならば今は絶好の機会です。
そして、その機会を利用して父を・・、ラキオス王を暗殺します。」
感情にまったくの揺れは無く、その目はまっすぐにコウを見つめていた。

「やっと覚悟決めやがったか・・。
そんでどういう作戦なんだよ。
安心しろって、焚きつけたのはこっちだ、いまさら裏切らねえよ。」
楽しければどうでもよさ気なコウは焚きつけた責任からか簡単に返事を返した。
むしろこのノリの軽さこそがコウたる所以といえた。

「ありがとうございます。
作戦は近々攻めてくるであろうスピリットをわからないように意図的に防衛線に穴を作り、スピリットを侵入させます。」

「その混乱に乗じてってわけか・・。」
いい感じに自分の狙い通りに成長してくれたレスティーナにコウは表情が緩むのが我慢できなかった。

「そうです。
あなたに汚れ役をやらせてしまうことになりますがよろしいでしょうか?」
しっかりとした声だがどこか心苦しそうに見えた。

「かまわねえよ。
さっきも言ったように焚きつけたのは俺だし、あの豚は前から気に入らなかったからな。
でもよ、スピリットって人間を傷つけられないんじゃないのか?」
暗殺云々よりも計画に失敗してレスティーナの立場が危うくなることの方が心配だったコウは頭に浮かんだ懸念材料を言った。

「ほとんどの国はそう教育されています。
ですが、侵入してきたスピリットが国王の暗殺目的に教育されたと思わせることができれば問題ありません。
そのためには、心苦しいですが暗殺の際には侵入して来たスピリットを誰にも知られることなく殺し、部屋の中や外にいる兵士も殺さねばなりません。
そして、それが出来るのはあなたしかいません。」
それは悲壮なまでの覚悟だった。

「わかった。
あんたがそれだけの覚悟を見せるとは正直思っていなかった。
だが、それだけ殺すんだ。
おまえはその殺した命に報いることが出来るのか?」
驚きとここまで覚悟させてしまったことで湧き上がる罪悪感のような微妙な感情を隠してコウは聞いた。

「できます。
私の目的は恒久平和を実現すること。
そのためならばこの手が血に塗れることすら厭いません。」

「くくく・・。
あんたは一皮向けたな。
これでこそ俺が認めた唯一の人間だ。
それじゃあ詳しいことを決めたら俺に連絡しろ。
わかっていると思うが、くれぐれも気をつけろよ。
これ以上長居するのもなんだから俺は行くぞ。
じゃあな。」
予想以上、期待以上だ。
そんな思いとともにコウは楽しそうに笑いながら部屋を後にした。


視点 レスティーナ
「ごめんなさい・・。」
彼は構わないといってくれた。
しかし、レスティーナの心はまったく晴れることはなく暗く沈み、思わず閉じた扉に向かって謝っていた。
だけど、後悔はしない。
誰かを巻き込んでもそうすると決めたのだ。
この先がたとえ地獄のような道程だったとしても、多くを救うためならば、理想のためならば後悔しない。
レスティーナは力強い眼差しで自分が作り出したい平和な未来を見つめるのであった。



あとがき
今回はちょっとシリアスなお話。
レスティーナ修羅になる。
目的のために暗殺決行。

そして、最終必殺“大人の事情”が発動。
それがあれば全て誤魔化すことが出来るという伝説の技。
これが使えるコウのボケ属性レベルは大分高いのです。

というわけでまた。