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「そういえば、アヴェンジャーくんはどないしとるんやろな〜。
ちょう、怖かったけど、せっちゃんとまた仲ようなれたし、一度お礼いいたいわー」
あれだけ怖い思いをされていながら御礼をいう気になるのは世界広しといえど、そういないであろう。
さすがはこのかというべきだろうか?

「お嬢様!!
あんなのに御礼なんて必要ありません!!」
それに反応したのは刹那であった。
またこのかと仲良くなれたのは嬉しいが、アヴェンジャーのおかげとは認めることは出来ない。
それは当然で、このかを危険な目にあわせたことは断じて許せないからだ。

「あー、またお嬢様っていうとるー。
そうやないで、またこのちゃんって呼んでーな」

「あ、うん。
こ、このちゃん…」
刹那は頬を染めて俯きながら言う。

「あーん、もうせっちゃんかわえーなー!!」
その様子を見たこのかは刹那に勢いよく抱きつき頬ずりするのであった。

とりあえず、彼女たちは幸せそうなのは間違いなかった。



アンリ・マユとお嬢様?

第5話 幼女と不審者 後編 〜悪魔と吸血鬼は一触即発なマブダチ〜



「ぜーはー、ぜーはー。
…で、いい加減貴様の正体と能力を説明してもらおうか」
気を取り直して聞く彼女だが、息切れするほどに醜態を晒した今となっては今更感がかなりある。

「僕はただのしがない一般人ですよー。
それに、能力って何ですかー?」
あきらかに嘘である。

「そもそも貴様は人間じゃないだろ!!!」

「ケケケ…」

「えー、なんのことおぅ?」

「では、拷問にかけてでも無理やり聞き出してやろう」

「いやん。
ウソっす、ウソっす!
俺の真名はアンリ・マユっていう小物で、他人に負わされた痛みの共有です!!」
さらっと言われたことで彼女は気付いていないが、後でその名の意味で驚くことになるのだが、それは別のお話である。

「屈するのが随分早いな…」

「だってー、キティちゃんマジで拷問する気満々なんだもん」
ぶーぶーと頬を膨らませていうアヴェンジャーだが、男がやっても気持ち悪いだけである。

「キティちゃん言うな!!」

「なんでー?
その身体になって“唯一元の自分の原型を留めている部分”なのにねー、けけけ…」

「な…んだと?」
空気が凍る。

「吸血鬼なんて化け物になる前はどんな生活だった?
ねえ、“お姫様”?」
その瞬間、空気がピキリと音を立てて崩れ落ち、あたりには濃密な魔力が噴き出している。

「黙れ」
それは言葉自体に重さがある殺意の篭った言葉。

「あら?
お姫様ってマジ?
冗談だったのにマジとはねー。
にしても、元王族の吸血鬼かよ。
人間捨てた感想は?」
だが、それでも彼は黙らない。
この程度の殺気で壊れるならば、彼は生前でとっくに壊れていた。
だが、彼は磔にされ、あらゆる責め苦を受けても生きていた。
そんな彼が動じるはずもない。

「貴様…」
それはエヴァンジェリンの最も触れられたくない部分。
運命に翻弄され、望まぬ形で吸血鬼になった彼女の深い闇の部分をアヴェンジャーは抉り出そうとしていた。

「何が良くて吸血鬼なんかになろうとしたんだかねー」

「いいかげん黙れ」
そこまでが限界だった。
これ以上言われたら彼女はアヴェンジャーを殺してしまうかもしれない。
それほどに彼女からは殺気が漏れ出していた。

「ああ、そうか。
お姫様は“化け物にされちまった”のか、けけけ…」

「…」
それは激情すら呑み込む静かな怒りだった。
エヴァンジェリンは不可視の糸で拘束された彼の身体を片手で持ち上げると、残る片方の腕をアヴェンジャーの胸に突き刺した。

「が…、あ…た、さっき言ったことをすっかり忘れてやがるな…。
教えてやるよ。
俺の能力をよ…ケケ…“偽り写し示す万象”(ヴェルグ・アヴェスター)」

「がっ…」

瞬間、エヴァンジェリンに強烈な痛みが走る。
悲鳴を上げないのはさすがだが、しかし彼女は力なく膝をつくと持ち上げられていたアヴェンジャーは拘束から逃れて床を転がった。

「いってーなー。
この前からこんなんばっかし…」
いい加減嫌にナンね…と思って肩をすくめた。

「貴様…、何をした?」
エヴァンジェリンは片膝をついた状態で胸を押さえてアヴェンジャーを見上げた。

「いっただろ?
それが俺の能力だ」

「ならば、なぜ貴様は立っていられる!
これは貴様が感じている痛みではないのか?」

「あいにく、痛みには強いのよ。
これでも、あらゆる痛みを味わったこともあるんでな」

「バカな…。
それになぜ痛みが消えない!?
満月ではないとはいえ、私がこの程度の…!?」
エヴァンジェリンはいつまでも消えない痛みのからくりに気付きはっと顔を上げた。

「けけけ…、相変わらず察するのが早いこった。
ご名答だ。
これは俺が感じている痛みであってあんたが受けた傷じゃねえ。
だから、いくら吸血鬼になったあんたでもコレだけはどうしようもなんねえよ」

「ぐ…」
彼女とて別に痛みに弱いわけではない。
数百年の生の中で死ぬほどの痛みを味わったことは一度や二度ではない。
だが、彼女は力を付けるにつれ、傷を負うことが少なくなり、継続する痛みに耐性が薄まっていたのだ。

「久々の痛みってのはどうだ?
懐かしいもんだろ?
ひゃはは」

「ああ、忘れかけていたよ。
私としたことがこの学園の能天気な連中に影響されかけていたこともな!!!」

「けけ…」
エヴァンジェリンは怒りの感情を押さえ込み残された少ない魔力全ての魔力を掌に載せて放とうとし、アヴェンジャーはザリチェとタルウィを両掌に構えて深く腰を落とした。

そして、今にも互いがぶつかり合おうとした瞬間、エヴァンジェリンとアヴェンジャーの間に割ってはいる影があった。
その影は飛び込むと同時に、アヴェンジャーのザリチェを蹴り飛ばし、残るタルウィを握る手を掴み上げ、もう片腕でエヴァンジェリンの腕を掴んで胸の前で交差する形で互いの腕を止めた。

「どういうことだ…茶々丸」
その声には怒りを通り越し、殺意すら宿っていた。
もしも人間ならば発狂してしまうほどの殺意を身に受けてでも無事なのは偏にロボットゆえである。

「申し訳ございません、マスター。
しかし、このまま続けていればどちらかが死に至るため戦闘を停止させました」

「これは私とやつの戦いだ。
どんな理由があろうとそれを汚すなど貴様であろうと許さんぞ」
それこそが彼女の彼女たる所以であり、最強の魔法使いとしての矜持であった。

「ひゃはは…、興ざめだな。
なんか萎えた」

「なんだと?
貴様から売った喧嘩だ。
逃げることは許さんぞ」

「んなこといっても、俺ってばもうフニャ○ンなのよ。
さっきまではビンビンだったけどよ」
射抜かれるほどの視線で睨まれても彼は動じることなくヒラヒラと手を振ると共有していた痛みを解除した。

「ふん、いずれ貴様とは決着を付けてやろう。
そして、貴様自身も我が配下に加えてやる」

「チッ…ナンダ、コレデオワリカヨ
モット気合イイレヨーゼ、ゴ主人」

「チャチャゼロ、貴様は黙っていろ」

「つーか、まだ諦めてなかったのかよ…って、あ、やべ…。
血が足りねえ…」
突如倒れそうになるアヴェンジャーを茶々丸は身体を支えた。

「大丈夫ですか?
普通の人間ならば致死量となる出血ですが、あなたはどうすればいいのでしょうか?」

「ケケ…、親友ピーンチ」
親友とかいいながら言ってる内容は最悪である。

「わりいけど、こんなもんで死ねねーのよ俺は。
つーわけで俺は寝る。
おい、エヴァっち!」

「なんだ?
というか、エヴァっち言うな」

「ちょっと動く余裕ねえから今日はここに泊まるわ。
よろしく、というわけおやすみー」
言い捨てると同時に眠り始めるアヴェンジャー。
仮にも、そのきっかけを作った人物の家で無防備に眠り始める彼の神経はかなり図太かった。

「なんなんだコイツは…」

「楽しそうですね。
マスター」

「ケケケ…」

「ふん…」
エヴァンジェリンは茶々丸の呟きには答えず踵を返すと自室へと戻るのだった。

そして、残された茶々丸とチャチャゼロはその背中を消えるまで見続けていた。


あとがき
相変わらずオチが弱い。
忙しすぎて更新率が相当落ちているのもどうにかしたい。
ちなみに、次は龍宮編である。
その次は考えていません。

だれか書いて欲しい人いたら言ってください。
びびっと来たら書くんでww

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