「ネギ!!」
目を覚ますと、いきなりアーニャに抱きつかれた。

「ここは?」

「病院よ。
良かった…、もう目を覚まさないかと思った…」
アーニャは本当にうれしいのか、目に涙を浮かべている。

「そうだ!!
村は!?
村はどうなったの!!」
ネギは痛む身体を無視してアーニャを引き剥がした。

「村なら大丈夫よ。
ネギのおかげで村は無事だから…」

「本当に!?」

「うん」

「でも、雷の暴風を撃った後ボクは意識を…」
記憶がなかった。
ただ、意識を失う瞬間酷く安心したのだけは覚えている。

「あのあと、ナギさんが来てくれたの。
それで、悪魔をみんな倒してくれて、ネギが限界を超えて強力な魔法を使ってくれたってことを聞いて…」
視線を落とすアーニャ。
その姿はとても小さく、弱弱しかった。

「そっか…」
ネギは会えなかったのは残念だが、今は歴史を変えられてことに対する充実感の方が上だった。

「ネギ…、これはナギさんからの預かり物」
アーニャは立てかけてある杖を手に取ると、ネギに渡した。

「ありがとう」

「それと…、
『おまえにはなにもしてやれなくてすまなかった。
この杖をやる。
俺の形見だ。
元気で暮らしてくれ』…って」

「父さんらしいな…」
ネギは小さく呟くと、涙をこらえるようにそっと視線を天井に向けるのだった。

「本当にありがとう。
ネギがいなかったらお父さんもお母さんも、村のみんなも助からなかった。
でも、そのせいでもしかしたらもう魔法が使えなくなるかもって…」
アーニャは涙を流しながらネギにすがりつく。

「大丈夫だよ。
お医者さんは1年間リハビリに専念すれば元通りになるって言ってたから」

「でも!!」
そのリハビリの過酷さを知るアーニャは表情を歪ませる。

「ボクはうれしいんだ。
村のみんなを助けることができてよかったと思ってる。
それに、ボクはアーニャの泣くところが見たくないからがんばったんだよ」
ネギはにこりと微笑み、アーニャの頭を撫でた。
天然タラシここに極めれり。

「にゃっ!!」
アーニャは瞬間湯沸かし器のように、一瞬で顔面を高潮させて声にならない声を上げた。
ぶっちゃけ、惚れた。
というよりも、ここで惚れるのも当たり前である。
自分の家族や、友達を身を滅ぼしかねない犠牲を払ってまで助け、かつ落ち込んでいるところを笑顔で慰めてくれる包容力。
これで惚れないわけがない。
前に会ったときはぜんぜん違うなどとは思いつくことすらできない。

「にゃ?
ははは…、ちょっとかっこつけすぎかな?
って、アーニャ?」
とりあえず、突然発した奇声はスルーして、冗談をいうが、反応を示さないアーニャの表情を覗き込むと、間近で直視したアーニャの精神は臨界を突破して目を回して倒れるのだった。
ハーレム狙いで逆行したくせに女性の機微には全く気付かないあたりが彼らしかった。
とはいうものの、まずは一人…というところだった。


ぶろ〜くん・わ〜るど

第2話 ツンデレ娘は素直になれない? 〜ボイスは釘宮推奨〜


事件から数年後。
ネギは1年のリハビリを経て魔法の力は無事に取り戻した。
周囲は1年の遅れを心配していたが、そんなものは無用の心配である。
なぜなら未来のネギには鍛えるために必要なものから、効率の良い方法などの知識がすでにあるからだ。
しかも、未来で収めた魔法も知識にあるのだから彼が本来の流れよりも格段に強くなるのは当たり前といえた。

そして、数年後の卒業式にはネギの戦闘能力の評価ランクは既にAAからAAAへと差し掛かっていた。
数値に直すなら約1500程度。
タカミチのようなトップクラスの人間には幾分か劣るが、ネギはまだ10歳の身であり、その才によって天才の名を魔法界へと轟かせていた。


「ネギー!!
あんたの卒業試験ってなに??」
ぱたぱたと足音を響かせて走り寄るアーニャ。

「今見るところ。
アーニャは?」

「私はロンドンで占い師よ」
アーニャはネギの手元を覗き込むと、そこにはぼんやりと文字が浮かび上がってくる。
内容は日本で教師をやることだった。
ネギとしては知っていたので驚きはないが、アーニャは憤慨していた。
憤慨というよりも焦りのほうが色濃い。
なぜなら、ネギは年齢という枠を通り越して魅力がある。
見た目は子供でも、その包容力、行動力はすばらしいものがあった。

だが、このときアーニャは未だ彼の行動力を見誤っていた。
そう、ネギはこの日のために“ある計画”を用意していたのだ。
逆行前に手に入れていたある薬のレシピ。
秘密裏に作成された“それ”は後に大きな波紋を引き起こすことをアーニャは予想すらしていなかった。

そして、ネギもネギでアーニャの行動力をなめすぎていた。
げに恐ろしきは恋する乙女というべきか、彼女はゆっくりと“ある場所”へと歩きはじめるのだった。

後に、目撃者は語る。
私は何も見ていません…と。


あとがき
なんだろこの終わり方…。
つーか、タイトル後の方が短い!?
まぁ、気にしない。
そんでもって、ようやくといっていいほど遅れて申し訳ない。
次回もぶろ〜くんでいこうと思いますので応援よろしくです。

次回予告
真帆良学園に降り立つネギ。
だが、降り立ったネギはいつもとは何かが違った!!
次回、ハーレム計画推進中!? 〜無差別爆撃、騙され騙して、嬉し恥ずかし天然魔法使い!〜
おたのしみに。

注:タイトルは大人の事情で変わることがあります。
ご了承ください。