真帆良学園都市に一人の青年がその地に足を踏み入れた。
年のころは16ほどで、すらりとした体躯に天然の茶色い髪を後ろで小さく結んだ青年の容姿はモデルや俳優ともなんら遜色なく、周囲と比べ明らかに浮いていた。
青年は小さく息を吐き、久しぶりの光景に顔を綻ばせる。
視線が集まっている。
だが、彼は注目されることに慣れきっていたこともあって気にも留めずに歩き出すのだった。


ぶろ〜くん・わ〜るど

第3話 ツンデレ超特急 〜年齢詐称は罪じゃない!?〜


「はじめまして、本日より2−Aの担任になるネギ・スプリングフィールドです。
3学期の間だけですが、よろしくお願いします。
なにか質問があれば何でも聞いてください」
あらかじめ配置されることがわかっていた罠を何気なく撤去し、ぽかーんと口を開いている生徒たちににこりと笑いかけて自己紹介した。
それはものすごく自然な動作過ぎて誰も口を開くことができなかった。

「「「「「「「か…」」」」」」」

「か?」

「「「「「「「「「かっこいーーーーーーーーーーー!!!!!」」」」」」」」」
ものごっつい絶叫だった。
このぐらいの反応を覚悟していたネギでさえ思わず身をひいてしまった。

「か、彼女はいるんですか!」
「い、いません」
大勢に囲まれて少々怯んだ様子のネギ。
そんなものは構わないといった様子で怒涛の質問攻めの生徒。
ものすごく対極的だった。

「身長は?」
「175cmくらい…?」

「どこ出身ですか?」
「イギリスのウェールズです」

「年齢は?」
「えっと、16歳かな?」

「頭いいんですか?」
「一応大学卒業程度の学力はあります」

「初キッスはいつ?」
「たしか二年位前に幼馴染と…」
「「「きゃーーーーー!!
幼馴染だってーー!!」」」
なにがおもしろいのかわからないが、幼馴染の部分だけ反応が濃かった。

「初体験は!?」
「…内緒です」
にこりと誤魔化すネギ。
前世は別として今世においては当然まだである。
むしろ、精通が着ていることすら怪しい。
だが、皆はその思わせぶりに熱狂している。
そろそろ他のクラスからクレームがきてもおかしくないだろう。

さて、ここまでくれば皆さんはもうお分かりであろう。
ネギはまだ10歳である。
その彼がなぜいろいろと矛盾している答えを言ったのかというと、ぶっちゃけ年齢詐称薬である。
しかも、ネギが未来の知識を利用して作り上げた自信作の解除しなければ持続し続け、エヴァンジェリンクラスの魔法使いでも言われて調べなければわからないくらいの効果があった。
そう、それもこれもハーレム計画の一端。
子供姿で計画を成し遂げることは不可能に近い。
本来の姿で好きになってくれる奇特なやつはショタコンと他少数だからだ。
なら、最初から青年の姿にしておけば?
彼がその考えに至るのはさして時間が掛からなかった。
ここまですることからもわかるように彼は本気だった。
もう、これ以上ないほど本気だ。
たとえるならば、“計画通り…”って感じであった。

だが、そうは問屋が卸さない。
物語にイレギュラーは付き物である。
ここで、彼の計画を根底から覆してもおかしくない闖入者が…。

「……ァ…ァアーニャフレイムバスターキーーーーーーック!!!!!」
「ぎゃああああ!!!」
そんなときだった。
突然赤い炎を纏ったトビ蹴りがネギの顔面に突き刺さるとネギは奇声を上げて吹っ飛んだ。

「あ、あんたなにいってんのよ!!!!
それに、そのかっこ!!!」

「げ…、ア、アーニャ?」
そう、ネギを突然蹴り飛ばしたのはネギの幼馴染兼、ツンデレ担当のロンドンに旅立ったはずのアーニャだった。

「ふん!
他の誰に見えるって言うのよ!!」

「でも、なんでここに?
たしか、ロンドンに…」

「ふふふふ…、甘い、甘いわよネギ。
これを見なさい!!」
どどーんというバックサウンドが付きそうなほどに自信満々に突きだされた紙には、日本で学生になることと書かれていた。

「えええええ!!!」
驚くのは無理もない。
本来なら修行内容が変わることなどはありえない。
異例中の異例と言うべきだろう。

「おじいちゃんを“説得”して変えてもらったのよ!!」

「…説得…?」
ネギはもう一度紙を見る。
そして、気付いた。
その紙はなぜか赤いインクが“まぶして”あった。
それも、なぜか時間が経って赤黒く変色している。

「説得よ!!」
絶対にうそだ。
だが、ネギは怖くて突っ込めなかった。
もしも肯定されたら怖い。
もはや、爺さんの冥福を祈る以外なかった。
触らぬ神に祟りなし。
誰にだって怖いものはあるのだ。


その頃…。
「しっかり!!
傷は浅いはずです!!!」
某所では懸命に誰かを励ます声が響いていたという…。
そして、その床には血文字で“犯人はアー”などと書かれていた。
合掌。



「で…、な・ん・で・あ・ん・たはそんな格好してんのよーーーーー!!!!!」

「あはは、僕のスーツ姿はそんなに似合わないかな?」
誤魔化しながら副音声であとでねと言ってウィンクするネギ。
顔を赤らめて呻くアーニャ。
ここらへんは惚れた弱みというやつだろう。

「う…、に、似合ってるわよ…」
ふんと顔を背ける一瞬にアイコンタクト。
それで伝わるあたりはさすが幼馴染である。

「ね、ね、この子誰?」

「あ、紹介しますね。
彼女がさっき言っていた僕の幼馴染のアーニャです」

「はじめまして、アン「じゃあ、この子がネギ先生の初キッスの相手ってこと?」…ヴァですって、ネ〜〜〜ギ〜〜〜〜!!!」
「「「「「「きゃああああああ!!!」」」」」」
「スクープ!!
スクープよ!!!」
「これはイケル!!
新刊はもらったぁ!!」
もうグダグダだった。
もはや質問どころではなく、この数十秒後に怒れる新田が乗り込んでくるまで喧騒はおさまることはなかった。



あとがき
今回はここまで。
アーニャ登場。
青年版ネギ。
初っ端から騙す気満々。
年齢詐称薬使用で真帆良赴任。

次回予告。
最強、最悪の魔法使いにして真祖の吸血鬼・エヴァンジェリン。
彼はそんな彼女を呼び出し真っ向から対峙する。
その邂逅が齎すものとは!?
次回、ぶろ〜くん・わーるど。
吸血娘はイイ気分 〜ツンデレばかりでなんでやねん。
            それは時代の流れなの〜
をお送りいたします。
また見てね!