ナコト写本の契約者

(注)のどかファンのかたは読まないほうがいいかもしれません。 それでも良い方はどうぞ。

第二話 “IF”

「ふー、やっと一段落だ。
そうだ、エセルから見てあのクラスはどう?」
初授業が終わりこちらを探るような目で見てくる生徒が多かったため念のために手元の本に話し掛けた。

「異常ですね。
最低でも5,6名はかなりの力を持ったものがいます。
敵意はありませんでしたが十分に気をつけてください。
特に闇の福音には注意を払ってください。
彼女の力の大半は封印されているようでしたが油断は出来ません。
あれだけの年月を過ごしたものですから魔力がなくても戦う方法の一つや二つは備えているでしょう。」

さすがは最古の魔道書というべきか普通ではわからないようなことまであの短時間で見抜いていたらしい。
「わかった。
一応対策くらいは考えておくよ。」

「それとマスター、後ろから高畑が近づいてきていますので…。」
そういってエセルの声は聞こえなくなり変わりに後ろからはタカミチから声がかかった。

「やあ、ネギくん。
初授業はどうでしたか?」
タカミチに本との会話を知られぬようにそれとなく視線を後ろに向ける。

「あ、タカミチ。
うん、一応問題はなかったよ。
みんな元気があって抑えるのが少し大変だったけどね。」

「そうだね、あのクラスは一癖ある子が多いからね。
そうだ、久しぶりに会ったことだしどこかに入って話そうか。」
一癖?
それどころじゃないよタカミチと心の中で呟いた。

「うん、でもどこかって喫茶店でもここにはあるの?」
ここは学園なのだから外に出るのかなと思って聞いてみると、

「安心していいよ。
ここは学園都市だから学園だけじゃなくていろいろあるんだよ。」
驚いたことにここには学園だけじゃなくお店などもたくさんあるらしい。

「そうなんだ。
じゃあ行こう。
あ、そうだタカミチには聞きたいことがあったんだ。」
あのクラスの事を聞かなくてはとふとそのことを思い出す。

「ん?なんだい。」



その頃…。

「きゃあああああ・・・。」
階段から足を踏み外した少女が地面に落下していた。
彼女は地面に体を強かに打ちつけたがゴキンという音とともにその痛みに失神した。

「ちょっと、本屋ちゃん大丈夫!」
階段から落ちて大丈夫はないだろうとは思うが、ちょうど通りかかっていた明日菜は額から血を流しながら左腕を歪な形に歪めているのどかの元に駆け寄った。
「まずは連絡しなくちゃ。」
頭を打っている可能性もあるため動かすわけにもいかず携帯電話を取り出し119を押した。
幸い息はあるので運がいいとしかいいようがない。
あの高さから落ちて見た感じ左腕の骨折くらいだろうか、命に別状はなさそうだった。
明日菜はその事実に安堵し救援を待った。



視点を戻し、何も知らない彼らはのんきにお茶を楽しんでいた。

「で、なんで僕のクラスに闇の福音がいるの?
というより生きてたんだ。」

「あー・・・。」
いきなりそのことを持ち出されたせいかタカミチはばつが悪そうに頭をかいた。

「クラス名簿を見てびっくりしたよ。
手配書と同じ顔があるんだから。
それになんか裏の人間が何人かいるしあからさまに警戒されてたよ。」
そう言うとタカミチは苦虫を踏み潰したように顔をゆがめた。

「あー、説明が足りなかったね。
いや、気付かないなら気付かないでいいと思っていたもんだから。」
さすがだねというようにタカミチは苦笑いを浮かべた。

「あれだけ睨まれれば普通気付くよ。
特にエヴァンジェリンさん。
あの人、心当たりはないけど僕に何か恨みがあるのかな?」
僕は困ったようにうーんと首をかしげた。

「それは多分、エヴァをこの学園に封印したのがキミのお父さんだからじゃないかな。」

「へえ、父さんって本当に凄かったんだね。
話でしか聞いたことがないからよくわからないけどあの闇の福音を封印するなんて。」
それは純粋に凄いと思った。
昔の資料を見る限りとてもじゃないがそこらの魔法使いが束になっても敵いそうもない福音を殺すのではなく魔力を封じたのだから。
父さんは本当に話を聞くとおり本当に最強の魔法使いらしかった。

「うん、凄かったよ。
いまでも僕はあの人には全然追いつけそうもないからね。」

「タカミ…。」
そのとき僕が何かを言おうとすると突然しずな先生が慌てた様子で走りこんできた。

「あ、よかった探しましたよ。
さっき、2−Aの宮崎さんが階段から落ちて病院に運ばれたそうで命に別状はありませんが頭を少し打ったらしくまだ意識が戻らないそうです。」

「なんだって!?
ネギくん病院に急ごう。」

「はい。」
驚くよりもまずは冷静に行動しなければと自分を戒め走り出すタカミチの後を急いだ。


病院に着いて医師に話を伺うと、頭の方はただの脳震盪らしくすぐに目を覚ますだろうとのことだった。
他の外傷は左腕の骨折だけであり、話に聞いた高さから落ちたにしては本当に運がいいとしかいいようがなかった。
他にも偶然通りかかった生徒の迅速な対応と発見が早かったこともあった。

ネギはその話を聞いて薄情かもしれないが最終試験がいきなり頓挫するようなことにならなくてすんだことの方に安堵していた。

そして、救助にあたった生徒、神楽坂明日菜はその迅速な対応をタカミチにほめられ喜びをあらわにしていた。
それを見てあの人はタカミチのことが好きなのかと思ったがそれはどうでもいいかと忘れることにした。

そんなこんなで赴任初日から前途は多難そうだった。
そんな不安を隠すように密かに気合を入れて再度頑張ることを心に誓った。



あとがき
管理人は都合のいい展開が嫌いなので…。

この展開を予測できた人は少ないと思います。
のどかファンのかたはごめんなさい。
もしあの場にネギがいなかったらこうなっていたと思います。
死ななかっただけマシですね。
普通あの高さから落ちたら死ぬか昏睡だと思います。
それでは。

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