ナコト写本の契約者

第25話


白髪の少年が天ケ崎千草と合流している頃、ネギ、刹那、明日菜の3人は彼らの合流地点に向かっていた。
その道中、エセルドレーダは回復のために本の状態に戻りネギの手の中にあった。
そんな中、当然ともいえるが明日菜だけは一人遅れた形でネギと刹那を必死で追っていた。
しかし、それを責められるはずもなく、あえて言えばいくらネギから魔力を借り受けている状態とはいえ話されないのが不思議なほどだった。

「明日菜の姐さんはすげえっすね。」
カモはカードや、アーティファクトのことを教えながら明日菜の戦闘者としての素質に舌を巻いた。

「な、なにがよ。」
カードの特性などを大体を理解して頭の中で整理していた明日菜は突然言われた言葉の意味がよくわからずに首をかしげた。

「いや、姐さんはマジ才能ありますぜ。
この短時間で魔力供給に慣れて使いこなし始めてんだからよ。」

「これってそんなにすごいの?」
実際普通に魔力供給による身体強化に慣れ始めている明日菜はそのすごさがわからないが、魔力や気を知らぬ常人ならば魔力で強化したとしても自在に身体を操ることはできず、慣れるまではそれなりの時間を要するはずだった。
だが、明日菜はほんの少しの時間でまるでいつもその状態であったほどになっていた。

「すごいってもんじゃねえっす。
多分姐さんは天才ってヤツっすよ。」
カモは興奮したように言う。

「ふ〜ん、でも以前ならこんな才能あってもしょうがないとか思ったけど、そのおかげでこのかを助ける力になるなら捨てたモンじゃないわね。」
そう言って、明日菜は更にスピードを上げ、先に進んでいたネギたちの背中を見つけ、その背中の先にはこのかを抱えた着ぐるみのような猿と、白髪の少年に眼鏡をかけた黒髪の女の姿が見えた。

「待て!!
そこまでだ!お嬢様を離せ!!」
刹那は声を上げながら千草たちの前で立ち止まり、ネギと明日菜も横に並んで立ち止まった。

「また、あんたらか・・。
見たことないやつまでおりますな。」

「天ケ崎千草!!
明日の朝にはおまえを捕らえに応援が来るぞ。
無駄な抵抗はやめ、投降するがいい!」

「ふふふ・・、応援が何ぼのもんや。
あの場所まで行きさえすれば・・。」
千草は刹那の言葉に耳を貸すどころか不敵に笑うとこのかを抱えた式神を伴って水面に降り立つ。
「それよりも・・、あんたらにもお嬢様の力の一端を見せたるわ。
本山でガタガタ震えてればよかったと後悔するで・・。
お嬢様・・失礼を。」
そう言って懐から一枚の札を取り出し、このかの胸の上に貼り付けた。

「んっ・・・。」
貼り付けられた札が一瞬淡い光を放つと、口を封じられたこのかは短く声を漏らす。

「オン キリ キリ ヴァジャラ ウーンハッタ・・。」
千草はそんなこのかの様子を気にも留めず、呪文を唱える。

「んんっ・・。」
そして、再びこのかの身体が発光するとこのかはのけぞりながらくぐもった声を漏らした瞬間、あたりの地面が光だし、地面から生えてくるようにして数え切れないほどの異形の鬼や、魔物が顕現した。

「ちょっと、ちょっと、こんなのありなのーーー!!」
それを見た明日菜の声はもはや悲鳴に近かった。

「やろー、このか姉さんの魔力で手当たり次第に召還しやがったな。」
カモは悔しそうに言うが、さすがにこれには驚いたのか表情には焦りがある。

「軽く、2、300体近くはいますね。
さて、どうしましょうか・・。」
この数を見ながらも内心はどうあれ表面上は冷静なネギはさすがというしかない。

「あんたらにはその鬼どもと遊んでてもらおか。
おとついのお返しもかねてやけど、ま、ガキやし殺さんよーにだけは言っとくわ。
安心しときぃ。
ほな・・。」
千草はにやりと意地の悪い笑みを浮かべて式神たちと一緒に刹那の制止の声を無視してその場から立ち去った。


千草が立ち去るのを見送ることしかできない悔しさに追い討ちをかけるようにして鬼の大群が包囲をじりじりと縮めてくる。
「兄貴、時間が欲しい。
障壁を。」
それを見てカモはネギに耳打ちすると、ネギはこくりと頷き呪文を唱え始めた。

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル 逆巻け春の風 我らに風の加護を。
風花旋風風障壁!!」
鬼たちは突如発生した竜巻の壁に阻まれてこれ以上近づけなくなり、竜巻の外で罵詈雑言の声を上げる。

「これって!?」
竜巻の中で明日菜は驚いたように声を上げて辺りを見回す。

「風の障壁です。
ただし、2,3分ほどしか持ちません!」

「よし!手短に作戦を立てようぜ!?
どうする、コイツはかなりまずい状況だ!!」
「・・・二手に別れる。
これしかありません。
・・・私が一人残り鬼たちを引きつけます。
その間に皆さんはお嬢様を追ってください。」
刹那はそう言って覚悟を決めたようにネギたちを見る。

「この数相手で随分な自信ですね、桜咲刹那。」
その作戦にいち早く異を唱えたのは意外にもエセルドレーダだった。
彼女はいつの間にか本の状態から人の形に戻って言う。
もっともそれは遠まわしで皮肉めいた言葉ではあるのだが・・。

「エセルドレーダさん・・・。」

「そうだ!?
エセルの姐さんが先に転移でこのか姉さんを奪取して逃げれば・・・。」
カモはこれは名案だといったように目を見開く。

「それは無理だよ。
今のエセルは自分以外の存在を転移させることは出来ない。
仮に先に助けに行ったとしてもこのかさんを連れて行くことが出来ない上に一人で戦うことになればいくらエセルでもただではすまないと思う。」
カモの思いつきの作戦も浴場での戦闘結果を考えれば成功率が低すぎるためにネギは冷静に作戦の穴を指摘した。

「そうか・・・。
仕方ねぇ、ならこの策で行こう。
まず、兄貴が魔法でこの包囲を突破して脱出。
兄貴以外はここで鬼の足止めをして、兄貴は敵に追いついたら姉さんたちを呼び寄せて一気に叩いて逃げる。
仮にこのか姉さんを救出して逃げても相手には転移魔法を使えるやつがいる以上確実に叩いておきたい。
さて、急造で穴だらけだが以上が簡単な作戦の概要だが何か質問はあるか?」
その言葉どおり穴があるとはいえ、この切迫した短い時間に次々と作戦を思いつけるカモは助言者として真に一流といえた。

「あの・・・、神楽坂さんは戦闘経験がありませんがどうすればいいのでしょうか?」
刹那は心配そうに言う。

「それについては大丈夫だ。 アスナの姐さんにはおれっちがサポートにつく。
それに、魔力供給にアーティファクト、加えて姐さんの特殊能力や才能さえあればあのぐらいの敵なら何とかなるはずだ。」
あらかじめその質問は予測済みだったのかカモは淀みなく答える。

「そうですか。
しかし・・・、神楽坂さん。
本当に戦えますか?」
刹那はカモから視線をはずすとまっすぐにアスナの目を見つめた。

「・・・うん。
正直言ってものすごく怖い。
だけど、このまま逃げ出すなんて出来ないよ。
もしここで逃げたら一生後悔すると思うし、このかの友達なんて言えなくなっちゃう。
だから怖くても大丈夫。
私はこのかのために戦う。」
アスナの言葉はまるで自分に言い聞かせるようでそれは戦う覚悟が込められていた。

「お嬢様のためにありがとうございます。」
互いに友を助けたいと自分で立ち上がったこととはいえ、刹那はうれしさに耐え切れぬように礼を言う。

「だから、気にしなくていいってば。
ほんとに刹那さんは真面目なんだから。」
お礼を言われた明日菜は少し照れた表情で苦笑いを浮かべた。

「ところで・・、刹那の姉さん。
ネギの兄貴のことは好きかい?」
空気を読まない。
この言葉が正に似合っている物言いだった。

「「「は?」」」
「このエロオコジョはこんなときになにを考えているのですか・・・。」
エセルドレーダはあきれてため息をつく。

「えっ・・と、カモさん、結局なにが言いたいのですか?」

「つまりだな・・、兄貴と刹那の姉さんがキスして契約しろってことだ。」

「「ええーーー!!」」
「な、なんでいきなりそんなことを?」
ネギはあくまでも自分のペースを崩さず冷静な声ではあるが、少し顔が赤く見えるのは気のせいだろうか?

「さっきも言ったとおり、作戦遂行に必要な召還をするためには契約してもらうしかねえ。
それにこの状況において契約して不利になることはまずないと考えれば契約して損はねぇ。」
それは間違いなく正論なのだがカモは普段が普段だけに面白がっているようにも聞こえてしまう。

「し、しかし・・。」

「緊急事態だ!
急げ!!」
顔を赤くしてうろたえる刹那をカモが一喝して魔法陣を書く。

「は、はいっ!」
刹那は返事をしてネギと向かい合い、互いに緊張した様子で顔を赤くして固まるが、カモの急かした声に覚悟を決めて口付けを交わした。
その瞬間、明日菜のときと同じく足元の魔方陣が輝き、空中にカードが浮かび上がってネギの手元に収まった。

「ネギ先生、明日菜さんのことはことは任せてください。
私が守りますから。
先生はこのかお嬢様を頼みます!」
顔が至近距離のまま刹那はネギの瞳を覗き込むようにして言った。

「はい!」

「それにしても・・・、そこ!
いつまで見詰め合ってんのよ!」
明日菜は何か不思議な感情がわきあがって思わず声をかけた。
それを聞いて二人はハッと気付いた様子で体を離し、カモはニヤニヤ笑っていた。

「マスター、そろそろ風が止みます。
準備を・・。」
そんな中でただ一人エセルドレーダは何事もなかったかのように進言する。

「わかった。 カモくん、キミがいてくれてよかった。」
こんな状況でも、焦らずに救出の策を見出したカモは確かに助言者にふさわしく、ネギはそう言わずには置けなかった。

「おれっちはいつでも兄貴の味方だからな。」

「うん・・、それでは行きます!!
ラス・テル・マ・スキル・マギステル 来れ雷精 風の精!! 雷を纏いて吹きすさべ南洋の嵐・・・。」
呪文を唱え、呪文が完成すると同時に風が止み、

「雷の暴風!!」
翳した手からは荒れ狂う暴風が鬼たちを巻き込み、進行方向にある全てのものを薙ぎ払った。
威力自体はエヴァンジェリン戦において使われたほどの威力はなくとも十分すぎた。
そもそも、この場において“限定解除”を使ってまで魔法を使う必要はなく、確かに刹那たちのことを考えればより多くの敵を削ることも大事だったが、この作戦の本来の目的はこのかの救出であり、そのため救出担当のネギが魔法で疲れてしまっては意味がないためだった。



「さて、マスターも無事に包囲網から脱出できたことですし、私たちは鬼退治にでも勤しむとしましょうか。」
飛んでいくネギを見送りながらエセルドレーダは戦闘の開始を合図するように呟いた。

「そうですね。
明日菜さん・・、落ち着いて戦ってください。
こいつらは見た目ほど恐ろしい相手ではありません。
先生から魔力の供給を受けている限りそう簡単に傷つくことはありませんし、それにせいぜいチンピラ100人に囲まれた程度だと思ってくれて構いません。」
刹那は明日菜を安心させるためか軽口とアドバイスをうまく合わせて言う。

「それって・・、安心そていーんだか、悪いんだか・・。
しょーがないわね・・・、じゃあ、ま・・鬼退治といこーか!!」
明日菜は気合と共に声を上げた。

「はい!」
刹那もその声にあわせて先陣を切るようにして鬼に向かって切りかかり始めた。

「アデアット!
・・・て、ハリセン?
なによこれーー!!」
教えられたとおりに明日菜はカードを掲げてアーティファクトを呼び寄せるが、そのあまりの意外さにまたも驚きに声を上げた。

「姐さん!
あぶねえ!
とにかくなんでもいいから攻撃してみろって!」
鬼が迫っているのを見てカモは声をかけるが、それは無責任この上ないが、状況から見れば間違えてはいなかった。

「うわ・・・!
えーい!このままいってやる!」
辛うじて身体をそらし、鬼の攻撃を避けると明日菜はカモに言われたとおり目前に迫る鬼にやけくそ気味にハリセンを叩き込む。

「ぐあああ・・。」
鬼はハリセンに軽く叩かれただけで苦悶の声を上げて消え去った。

「あれ・・?
なによ、コイツ弱いじゃない。」

「明日菜さん・・すごい。」
さりげなくフォローに回っている刹那は理由はわからなくとも鬼を一瞬で消した一撃に感嘆の声を漏らす。

「ちげえっすよ、姐さん。
こいつらが弱いんじゃなくて、姐さんがすげえんすよ。
多分、オレッちの予想が正しければ姐さんは奴らにとって天敵だぜ。」
明日菜はカモの言葉に耳を傾けつつ、再び迫り来る鬼2体をハリセンで叩くと2体は音もなく消え去る。

「やっぱり・・、どうやら姐さんのアーティファクトは鬼を叩くだけで返しちまう代物らしい。
こいつはうれしい誤算だ。
これならいけるかもしれないな。」
カモはそう言ってにやりと笑う。

「よくわからないけど、私にとって相性のいい敵ってことね。」
明日菜は自信を持って先ほどとは打って変わって攻勢に転じ始め、迫る鬼を叩き、すれ違い様にハリセンを滑らせ、それはまるで突如戦場に降臨した戦女神のようでもあった。 その彼女を見たものの誰もが今日はじめて戦場に立ったなどと信じてくれぬほどの勇猛さだった。
彼女の勇敢さにも理由がある。
それは様々な要素が複雑に絡まりあい、そのほとんどが彼女にとって良い方向に進んだからだ。
アーティファクトの特性、鬼たちの攻撃では魔力で強化した身体を傷つけられぬこと、そして恐怖をも飲み込むほどに友を助けたいという気持ち。
それらが一つになった瞬間、彼女は一つの戦力として、一人の戦士として出来上がったのだった。

「このぉ!!」
明日菜は手数は多くはないが、一撃で確実に鬼を消していく。

「すげぇ・・。」
カモはもはや感嘆の声しか漏らせなかった。
自分の予想を遥かに超えた明日菜の強さに驚きよりも賞賛の念のほうが強く感じられた。

「明日菜さんに負けてはいられないな・・。」
刹那はふっと笑うと刀を鞘に収め、再び高速で抜き去り一瞬で十数体の鬼を消し去る。

「はっ・・!」
そして、エセルドレーダも刹那のやる気に呼応するかのように頭上に大量の魔力球を形成して飛礫のごとく落とし始めた。



敵も半ばまで減った頃、刹那と明日菜は互いにフォローし合い、敵から間合いを置くと息を切らしながら背中を合わせて互いに笑った。
「結構いいコンビかもね、私たち。」

「ふふ・・。」
二人は既に互いを認め合い、戦友として絆を深め合う。
刹那はそんな気持ちを心地よく思い、不謹慎と思いながらも口元が緩むのが止められなかった。

「修学旅行終わったら剣道教えてよ。
刹那さん。」
周りを鬼に囲まれているというのにこんな台詞が出るあたりもはやさすがとしか言いようがない。

「えっ?
いいですけど・・、わたしもまだ未熟なので・・・。」
少し照れた表情で刹那は言う。

「こんな状況だってのに姐さんたち余裕だな・・・。」
ポツリと呟かれたカモの言葉は鬼たちの心境も代弁しているかのようだった。
さりげなくエセルドレーダも少し離れた位置で彼女らを見て皮肉気にため息をついていた。


「す、数百体いた兵が数分で半ばまでも・・!?」
そんな様子とは裏腹に鬼は驚愕の声を上げていた。
その言葉どおりにあたりを見渡せば数の減りは明らかだった。
最も多く倒しているのはエセルドレーダではあるが、それは彼女の攻撃の仕方が遠距離の拡散型の魔法であるがゆえでもある。
鬼たちは比較的魔法耐性が弱いのか、魔力球はまるで紙を引き裂くかのように倒せた。

しかし、いつまでもそううまくいくはずもなく、魔力球を放つエセルドレーダに向けて一人の影が死角から襲い掛かる。

「!?」
エセルドレーダはそれをかろうじて影の後ろに転移し、そのがら空きの背中に魔力球を放った。
だが、魔力球を喰らった鬼は彼女が予測したとおりにはならず地面に叩きつけられ、姿を消すどころか何もなかったように立ち上がった。

「立ち上がった!?」
その光景はエセルドレーダからしてみれば驚愕のものだった。
とっさとはいえ、間違いなく本気で放った魔法を喰らって立ち上がるということは先ほどまでの格が違うが窺えた。

「ふん・・、その程度じゃ効かんな、姉ちゃん。」
そう言って、他のヤツとは少し違う姿をした鳥族の男はコキコキと首を鳴らしてゆっくりと歩み寄る。

「今までの雑魚とは違うというわけですか。
ふ・・、その減らず口、すぐに叩けぬようにしてあげましょう。」
一発で倒れないなら数を当てればよいといったように手を掲げると頭上に大量の魔力球が浮かび上がり合図と共に戦いは再び始まった。

そしてその同時刻、刹那と明日菜も同じように先ほどとは格が違う相手と対峙していた。

明日菜は今までとは明らかに実力の違う敵との対峙に戸惑いを隠せなかった。
そもそも、明日菜にとっての戦いとはアーティファクトを一度でも当てれば終わるという一撃必殺、しいて言うならばヒットアンドアウェイな戦い方に限定される。
それは明日菜の能力の特性上というだけではなく、それは自身の技術力の問題もあるために知らずにそんな戦術を使わざるを得なかった。
しかし、その前提を覆すほどの能力や技術を持つ敵がいたらどうなろうか?
現に今明日菜と対峙する相手は強く、当然のことながら切り札であるハリセンの一撃は当たらず、逆に攻撃され続けて反撃もままならぬ状態に陥っていた。
今はまだ魔力の守りは破られてはいないがこのままでは時間の問題であるのは間違えなかった。

加えて、明日菜のサポートの回っていた刹那もほかとは一回りほど大きな鬼と対峙し、動けぬ状況にあった。

「明日菜さん!」
きゃあと明日菜の小さい悲鳴に顔を向けた瞬間、横からぞくりとした感覚が襲い掛かる。

「おっと、神鳴流の嬢ちゃんの相手はワシらや。
助けに行きたいなら何とかすることだな。」
鬼は肩の上に狐の面をつけた者を載せて不敵に笑って手に持つ棍棒を振りかぶった。

「く・・。」
横合いから振られた超重の棍棒をなんとか夕凪でいなし、助けにいけぬもどかしさに歯噛みした。

だが悪いことは続くものであり、突如森の更に奥の祭壇で膨大な魔力が迸り、光の柱が立ち上った。
「!?
あの光の柱は・・!?」

「ほっほ〜、コイツは見物だな。」
驚く刹那の声とは対照的に鬼の声は面白そうな響きが含まれている。

「どうやらクライアントの千草はんの計画がうまくいってるみたいですなー。
あの可愛い魔法使い君は間に合わんかったんやろか?
まぁ、ウチには関係ありまへんけどなー、刹那センパイ。」
ぱしゃぱしゃと足音を響かせて現われたのはもう既に二度の戦いを繰り広げている月詠だった。
彼女はまるで雪辱戦をしに来たというように好戦的にニィと口元を歪ませる。

「月詠!!」
ここに来て・・!
そんな内心を代弁するかのように刹那は悔しさに歯を食いしばりすぎて奥歯が砕けそうになっていた。
そしてそこに追い討ちをかけるように明日菜は鳥族の鬼にアーティファクトを持つ手ごとひねり上げられ宙吊りにされ、抵抗こそしているがもはや戦える状況になくなっていた。

「さて、どうする神鳴流剣士・・もう手詰まりか?」
鬼のあざける声を無視してエセルドレーダに視線を移すが、彼女も多くの鬼に囲まれ助けは期待できそうにもない。

「・・・。」
マズイ・・、このままでは・・。
そんなことを思い、刹那は覚悟を決めて真の力を解放しようとした瞬間それを遮るようにして辺りに銃声が響き渡り、新たな戦況に推移するのであった。




あとがき
長っ・・・!
あ〜きつかった。
今回も中途半端な途切れですが、次はネギ視点です。
明日菜を異常に強くしすぎかな?
とも思ったけどこれぐらいは無茶させないと思った管理人でした。
それにしても最近は更新が早い。

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