ナコト写本の契約者

第32話


ネギがエヴァンジェリンに弟子入りを頼み、弟子入り試験の条件を告げられた次の日、彼は実戦なら別にしても真っ向に戦ってはこのままではまず勝てないことを誰よりも理解していたゆえにある人物に戦いを教えてもらおうと行動しだした。

「龍宮さん、ちょっとよろしいでしょうか?」
そのある人物というのは出席番号18番・龍宮真名であった。
ネギは偶然から龍宮が様々な戦場に身に置きながらも生き残ったことを知り、これから先強者と戦っても生き残れるようになりたい彼にとってこの人選は必然とも言えた。

「ネギ先生か、どうしたんだい?」
龍宮は話しかけられたことで表情に若干の驚きを含ませるが、気を取り直すようにギターケースを担ぎなおした。

「少しお聞きしたいのですが、龍宮さんはお金さえ払えば仕事を請けてもらえるのでしょうか?」

「ああ、依頼内容や金額にもよるが何か頼みごとかい?」
そう言った彼女の表情はいつの間にか引き締められ、歴戦の戦士の顔になっていた。

「ええ、前金で100万円払いますので、期間限定で構わないので僕に戦い方を教えてもらいませんか?」
余談であるが、ネギは普段からほとんどお金を使う機会がないためかなりの金額がたまっていたこともあって100万円ほどなら大して痛くない出費であった。

「戦い方・・?」
そんな依頼を受けたのは初めてだった為、龍宮は怪訝な表情を浮かべた。

「はい、もちろん別件で依頼が入ったときや、忙しいときは構いませんので僕に“生き残るための戦い方”を教えてもらえませんか?
自分よりも強い敵に会ったときにも出し抜けるような強さを僕に伝授していただきたいのです。
期間が終わった暁には残りの依頼料として100万円をお支払いいたします。」
ネギが言ったとおり龍宮の戦い方こそが彼にとってある意味理想の形といえた。

「ふふふ・・、依頼というから何かと思ったがその内容でその依頼料ならお安い御用だ。
だが、期間限定というのはどのくらいなんだい?」
受領した彼女はおもしろそうに笑うと、思いついた疑問を口にする。

「僕としては大体卒業までの1年を目安に考えていますが、仮に何らかの事情で真帆良を離れることとなったとしても残りのお金は手渡しますので安心してください。」
ネギの言った条件はあらゆる点で龍宮に対して配慮されており、普通の依頼から考えれば破格といえた。

「そうか、じゃあ今日から早速始めるとしよう。
ただし、泣き言は聞かないつもりだ。
容赦なく私の経験を叩きこんであげるよ。」

「わかりました。
ありがとうございます。
それに、泣き言なんていいませんよ。」
ネギは小さく、だからこそあなたに依頼したのですから・・、と呟いた。


こうして、ネギの修行は始まった。
これから行われるであろう修行は確かに彼を強くするだろうが、想像を絶することは間違いなかった。




一方その頃、どこかの世界では・・・。

「九朗、あやつの潜伏先がわかった。」
声の主である少女は古風な喋り方を操り、青い髪を後ろで一つにまとめてレオタードのようなボディースーツに身を包んでいた。

「そうか。」
そう返事を返した20代半ばほどの青年は精悍な顔を引き締め、ゆっくりと頷いた。

「だが問題がある。
逃げ込んだ先というのがどうにも厄介で我らの本来の存在規模のまま世界に介入したならばその世界のバランス事態を崩しかねない。
もしも我らがアヤツを追うならばそれ相応の覚悟をしなければならぬな。」
少女は表情を引き締めると悔しげに言う。

「おいおい、それじゃ“元”の俺たちくらいの力まで落とさなければならないっていうのかよ。」

「うむ。
仕方あるまい。
いまや我らの力は世界のバランスを崩すほどになっておるのだ。
我らが介入したせいで世界が滅んだなどということがあっては申し訳がなさ過ぎるであろう。」
仕方ないであろう?
といったように、少女はため息をついた。

「そりゃそうだけどよ。
でも、これはかなりリスキーなミッションになりそうだな。
それにしてもあの野郎は随分とめんどうところに逃げ込んでくれやがって・・。」
青年も呟きながらもつられるようにため息をつく。

「まぁ、よいではないか。
十中八九罠ではあるが、アヤツに再び“魔を断つ剣”の意味を教えてやろうではないか。」
その声にはどこか楽しそうな響きがあり、少女はにやりと口元を一瞬ゆがめた。

「それもそうだな。
それに、少しでも早くこの終わりの見えない永劫の戦いを終わらせるためにも・・。」

「九朗・・。」
少女と青年にこれ以上の言葉は必要なく、時間すらも関係のない長き戦いによってすり減らした精神を慰めあうように二人はどちらともなく寄り添い、自然と身体を重ねるのだった。



あとがき
今回も出来が駄目っぽい。 最近は忙しくて文が雑になっているな〜って常々思います。
でも、勘弁してくださいね。

ついに九朗たち登場。
しかし、複線でしかありませんが・・。

ネギは龍宮に弟子入りです。
このネギならば中国拳法よりもサバイバル&実戦の技術を学びたいと思うはずなので・・。
この展開を予想できた人はすごいです。
それと、これからはそろそろオリジナル展開も織り交ぜながら書いていきます。

それでは感想お待ちしています。

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