ナコト写本の契約者
第36話
それはある日、修行中の何気なく出た疑問の一言から始まった。
「前々から聞きたいと思っていたことがある。
以前から思っていたが結局あいつは何者なんだ?」
エヴァンジェリンは眉根を寄せてネギの隣に佇むエセルドレーダを見やった。
「・・・やはり修行のためにも、ちょうどいいのでここで話しておきましょう。
率直にいうと彼女は魔導書の精霊です。」
ネギは一拍の間をおき、意味がわからないことを承知で詳しい説明をする前にエセルドレーダの正体を暴露する。
「魔導書の精霊?
聞いたことがないがなんだそれは?」
エヴァンジェリンは数百年の人生の中で初めて聞いた単語に怪訝な表情を浮かべた。
「エヴァンジェリンさんも知っているようにこの世には外道の知識の集大成と呼ばれる力のある魔道書というものが存在しています。
それらの中でも特に力の強い高位の魔導書は時と共に自我を持つようになり、実体を持つようになります。」
「初耳だな。
それがアイツというわけか・・。」
「はい、彼女はナコト写本の精霊であり、僕はその契約者です。」
「な、ナコト写本だと!?
まさかあの最古の魔導書のか!?」
「彼女はそのオリジナルです。」
「馬鹿な・・!?
貴様はそんな存在と契約しているというのか・・。
いや、それ以前に現存するかどうかもわからぬ代物をどこで手に入れたというのだ!!」
エヴァンジェリンが驚くのも当然だった。
高位の魔導書というのはほとんど伝説上の代物であり、現存するかどうかもわからないものであったことから普段はめったなことでは正気を失うことがない彼女でさえ驚かずにいられぬほどであった。
「これから僕の過去をお見せいたします。
6年前の雪の夜、僕が“死んだ”日になにがあったのかを・・。」
ネギは別の意図もあるが口で説明するよりも見せた方が早いと思ったことから過去視の魔法を使うことにした。
「“死んだ”だと?」
比喩のような曖昧な言い方にエヴァンジェリンは眉根を寄せるが鸚鵡返しに呟くだけでこれから見せるといったことを信用して深くは追求しなかった。
「ええ、あと茶々丸さんにお願いがあるのですが、今から修学旅行の戦いに関わった人たち、朝倉さん、長谷川さん、古さんの三人を呼んでいただけませんか?
刹那さん、明日菜さん、このかさんは僕が連絡しますので・・。」
「はい、ですが龍宮さんと長瀬さんはよろしいのですか?」
「ええ、彼女たちは試さなくても覚悟が出来ていますから。」
「そういうことか・・。
突然なにを言い出すかと思えばこれから見せる過去でやつらを見定めようというわけか。
まぁ、刹那も呼ぶのは契約者の一人だからということだろうがな。」
彼女の予想は概ね当たっていた。
これからネギは自分の過去の凄惨な映像を見せることで裏の世界に足を踏み入れた人物を元の平穏に戻すためであり、それは彼の遠回しな優しさの一端であった。
刹那に至っては前に言った化け物ではないということを映像をもって証明したいとすら考えていた。
「はい。」
ネギは目を瞑って覚悟を決めたように一言短く返事を返した。
「くくく・・、それだけ言うのだ。
どれだけ凄惨な光景が見られるのか楽しみにしているよ。」
そう言ってエヴァンジェリンは再びくくく・・とくぐもった残酷な笑みを漏らした。
彼はそんなエヴァンジェリンの声には反応せず、一人ログハウスの奥の部屋に歩いていく彼女を見送り、一人残されたネギは目を瞑ったままその場に佇み続けるのだった。
あとがき
すみません
中途半端ですが、過去編は後編というか37話に続きます。
37話は8割方完成しておりますので後は今回に文を続けるように書き足すだけので一週間以内に更新予定。
(一週間以内とか言いながら基本的に一週間に一回は更新している計算だから普段どおりってことなのかね?)
掲示板に疑問の声がありましたので載せておきます。
問)
あまりクトゥルー神話には詳しくないんですが、ナイア達邪神はこの間のランクで言うとどの辺りなんでしょう? デモンベイン本編をみると無茶苦茶とんでもないようですが
回答)
邪神のランクですか?
テキトーですが、あのランキングと照らし合わせ・・・、
ナイアルラトホテップ
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[今の通常ネギとリベルレギスに搭乗した最終血戦時のマスターテリオン&エセルのぐらいの実力の壁]
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旧神九郎&アル(デモンベイン搭乗)
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マスターテリオン&エセルドレーダ(リベルレギス搭乗)
九郎&アル(デモンベイン搭乗)
ネロ(ネームレスワン搭乗)
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[戦車と竹槍ぐらいの力の壁]
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旧神九郎
少なく見積もってもこれぐらいはあるかと思うんですが、どうでしょう?
デモンベインに乗った九郎達がナイアルラトホテップに勝てたのは、輝くトラペゾヘドロン+いろんな要因(例えば宇宙や星の加護)が九郎に協力したから勝てたぐらいで…
ということで、千歳さんの意見を参考にさせていただきました。
ご意見ありがとうございました。
SS
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