注意:今回のお話には残酷な描写が多々含まれています。
   苦手な方は読まれないほうがよろしいと思います。
   それでも読む!という方だけ覚悟の上お先にお進みください。
   それと、読んだ後に気分が悪くなっても管理人は一切責任を取りません。
   

ナコト写本の契約者

第43話


私は変な夢を見た。
とても、とても恐ろしい夢とも思えない夢。
口に出すことはおろか、思い出すだけで寒気のするような生々しい悪夢。

それは、私達が見たこともない男の人たちに組み敷かれて襲われ、助けられる夢。

あれは本当にあったことなのだろうか?
それとも、一夜限りの夢だったのか…。
本当のところはわからない。
だけど、私はそれが夢であって欲しいと思っている。
だって、あの笑顔が偽りに満ちたもので、私の…私達のせいで……なんて思いたくないから・・。



その日、風香と史伽は偶然帰るのが遅くなり、暗い夜道を怖がる史伽を宥めながら帰宅していた。
彼女達は薄暗い夜道を歩き、人通りの少ない路地に差し掛かったとき背後からいきなり襲われ暗闇に引きずりこまれた。

「いっ…んむ!!」
突然のことに悲鳴を上げようとした史伽は互いに口を押さえつけられる。

「おい!
しっかり押さえとけ!!」

「史伽を離せーー!!」
風香は自分が押さえつけられているのにも関わらずじたばたと抵抗しながら史伽の身を案じていた。

「いや!!
やだっ!!
触らないで!!」

「くそっ!!
静かにしやがれ!!」
暴れられた拍子に史伽の手を離してしまった男は再び地面に頭を押さえつけていやらしい笑みを浮かべた。

「おい、早いとこ誰か来る前にやっとこーぜ。
俺もう我慢できねーよ。」

「おいおい、がっつくなよ。
だがまあ、誰かに見られても面倒だしな」

「おう」
野卑な笑みを浮かべて男達は二人の服を引きちぎるようにして剥ぎ、今にも襲いかかろうとした瞬間、二人の……否、一人の男は不思議な音を聞いた。

「えっ…?」
それは誰の声だったのか。
次には、ごきり…と、静寂の中で突如辺りに何かをへし折ったような不気味な音が鳴り響いた。

「え、あ…おい、おまえ……なんだよそれ…。
な、なんの冗談だよ?」
音のした方へと風香を押さえていた男が顔を向けるとそこにはありえない光景が広がっていた。

暗がりの中で小さな人影が丸い何かをその手に無造作にぶら下げていて、その傍には首のない胴体が噴水のように血を吹き出させていた。

「「きゃあああああ!!!!」」
二人はその陰惨な光景に悲鳴を上げ、史伽は悲鳴と共に気絶し、風香も気絶こそしていないが腰を抜かして失禁していた。

「た、たす…」
男の口は最後まで開くことはなかった。
小さな人影が目の前から一瞬で姿を消し、男の首を力任せにもいだのだ。

それはあまりにも残酷で慈悲のない行動。
彼の行動には躊躇というものを欠片も感じさせなかった。

「下衆が…」
吐き捨てる声に一切の暖かみはなく、そこには人の形をした闇が存在していた。

「ネ、ネギセンセ…イ?」
震える声で呟かれる。
そこにはこの壮絶な光景にも顔を青ざめさせただけで意識を飛ばしていない風香の姿があった。

「……」

「あの人たち殺しちゃったの?
あたし達がおそわれ…たから……?
私達のせいで死んじゃったの?」
風香はがたがたと身体を震わせ、自分達を襲った相手だというのに彼らが死んだことに心を痛め、
そして、それ以上にネギが自分達のために人を殺したということを信じられぬ思いで聞き返した。

「風香さん。
これは夢ですよ。
現実ではありませんから…。
『眠りの霧』
それではおやすみなさい」
優しいあなた達があんな下衆のために心を痛める必要はありません・・と、ネギは意識のない彼女達にそっと呟いた。

「しかし、相変わらずマスターは身内には甘いですね」
突然かけられた声にネギは驚きもせずに振り向くと、そこには空間を歪ませて現われたエセルドレーダがいた。

「違うよエセル。
僕は理不尽な運命に翻弄される人を見たくないだけだ。
でも、キミからすればそれが甘いって事なのかもしれないけど…ね」

「マスターのその悪癖に近い甘さは今更です。
それでどうですか?
初めて人を殺した感想は?」

「悪魔や魔物を殺すのとさして変わりはしないよ。
しかしまあ、初めて手を染めた血があんな下衆のだというのは皮肉というべきかな?」

「たしかに殺すにも値しない連中ですが、それ以上に生かしておくのも不愉快な連中です。
殺しておいて正解でしょう」
ネギたちは知らないが、殺された男達はここ数日の間騒がれていた婦女連続暴行の犯人である。
そのこともあってネギはその後、殺したことを罪に問われることはなかった。
元々学園長自身も対処に困っていた事件だからでもあるが、ここでネギを処分し、学園を離れられ学園都市にとって、ひいては孫娘の護衛のための強力なカードを失うことを良しとしない打算もあった。

「それにしても、初めての人殺しにここまで何も感じないとはいよいよ僕の精神は行き着くところまでいっているのかもしれない……ああ、そうか。
僕はもうとっくに狂っていたのか。
僕は今まで認めたくない事実から目を逸らしていただけだったんだな」
そう言って紅く染めた掌をだらりと下げ、口の端を持ち上げて自虐的に笑う。

だが、彼は気付いていない。
それが彼自身の崩壊…<破滅>…の始まりということに…。
彼は“まだ”気付いていない。
いつの間にか対価…<代償>…を払わずに魔導書の知識を引き出せていることに…、彼は“まだ”気付いていない。
それが後に彼の運命を狂わせることにすら彼は未だ気付いていない。

「ようやくですか……。
それでこそです。
あなたは魔導書と契約をした魔術師なのですから、狂うぐらいの精神でなければ私を扱いきれません」

人は、彼はそこまで強き精神<心>を持っていないことも…。

「それもそうか。
しかしまぁ…、望んではいないけれどまともな死に方は出来そうにないね」
皮肉気だが、どこか自嘲的に笑うネギの表情は10歳の少年が浮かべるには異常すぎた。

それでも、運命という名の舞台は中心人物<主役>たる彼を放ってはおかない。
そんな運命に踊らされる中心人物は舞台の幕で笑う観客<邪神>をまるで光の下に集う誘蛾のように舞台の上へと誘う。

「魔導に身を落とした時点でまともな死などありえませんよ」

そして、運命は、宿命は交ざり合う。

「振り返る道がない以上前に進むしかない……か。
だけど、今更それに気付くなんて僕はどれだけ弱くて愚かなんだろうな……」
もはや、進むしか選択肢のない彼にとってそれはただの呟きに過ぎない。
それがわかっていながら、時折立ち止まり、泣きそうなくらい苦しくなって崩れ落ちそうになる膝を抱えて歩く彼は未だ人を捨てきることができていなかった。

邂逅は近い。
邂逅を約束された朱<負>と蒼<正>は互いに貪りあうのか…。
それとも…。









あとがき
しんみりな雰囲気を壊したくない人はブラウザバックです!
いや別に、というお方はあとがきをどうぞ。






ダーーーーーーーーーク!!!!!!!
すみません(土下座
やりすぎました。
本当に申し訳ない。

だが、俺は後悔していn(ry
そろそろウチのネギくんもワンステップ上にいかせたk・・。
m(#´∀`)≡⊃)∀`)・:(そろそろ黙れ

でも、これが後々重要になってくるんです(プロットだと)

そして、お待たせしました風香&史伽ファンの方!
そんでもって、ごめんなさい。
こんな形での再登場は望んでいないでしょう(当たり前
ちなみになぜ双子だったのかは・・・、ぶっちゃけ消去法です。
なんか他のキャラだとしっくりこなかったww

だがお忘れになってはいけない!
これを書いているのがizumoだということをwww
それにしても、毎度毎度あとがきが雰囲気ぶち壊しネ。

それと、最後の方だけちょっと視点をダブらせて書きました。
お分かりになられたでしょうか。
ちなみに神?視点と、心象視点?です。
というわけで、そろそろです。
ヤツが来ますよw
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